業務委託契約は,被告が,平成16年9月13日に,原告に 47 対し,開発研究業務の一時停止を指示し,開発試験の業務委託をすべて一 時停止することを通知し,これを受けて,原告が,同年10月21日付け 書面をもって,本件業務委託契約を解除する旨の意思表示をしたことによ り,解約されたものというべきである(被告の上記通知は,平成16年9 月30日の期間満了の1か月前までに申し入れられたものではないから, 同年10月1日から3か月間更新された上で,その期間満了前に原告と被 告との間で解約の合意が成立したものと解される。
)。
よって,原告は,被告に対し,本件業務委託契約に基づき,平成16年 6月1日から同年9月30日まで分の業務委託料請求権を有する。
ウ被告の主張について (ア)被告は,八都県市条例の施行前である平成15年9月30日までには 販売準備が行われるべきことが原告及び被告の共通認識であり,本件業 務委託契約が,その契約書(甲2)の第4条の文言上は,平成15年9 月30日以降も3か月ごとに自動更新されるかのように記載されている ものの,原告と被告との間では,本件業務委託契約の締結当時,1回の みしか自動更新されず,平成15年9月30日には終了することが合意 されていた旨主張する。
しかしながら,八都県市条例が平成15年10月1日に施行されるた め,原告及び被告が,それ以前に本件許諾製品の販売準備を整えること を目指していたからといっても,本件業務委託契約における委託業務は, 本件許諾製品の設計,実験,製造等に関する試験研究並びに技術指導に 関する業務であり,その進行には不確定な面があることが否めないこと, 前記1認定のとおり,本件業務委託契約は,委託業務について,研究開 発の期限やスケジュールを定めていないことに照らすと,原告と被告と の間で,本件業務委託契約の締結当時,自動更新は1度しかされないこ とが当然の前提とされていたとは認めることができない。
48 そして,本件業務委託契約に係る契約書(甲2)中には,自動更新の 回数を制限する規定は存しないことからすれば,上記契約書の第4条の 文言のとおり,契約の期間満了の1か月前までに,原告ないし被告のい ずれか一方から相手方に対し,何らの申出もない場合には自動的に3か 月ごとに延長されることが約定されていたものと認めることができる。
(イ)被告は,本件業務委託契約に係る契約書(甲2)の第4条には,平成 15年9月30日以降も3か月ごとに契約が自動更新される旨記載され ていたにもかかわらず,原告と被告とは,同月16日,本件業務委託契 約に基づく業務委託料の支払を平成16年3月31日まで延長,継続す ることを別途合意したこと(甲3)は,本件業務委託契約が同日をもっ て終了することが原告及び被告との間で前提とされていたことを裏付け るものである旨主張する。
しかしながら,既に述べたとおり,原告と被告との間における平成1 5年9月16日付けの合意(甲3)は,本件業務委託契約における委託 業務に,粒子状物質(PM)と窒素酸化物(NOx)を同時に削減する システムの試験研究業務を追加することを合意したものであり,上記合 意は,原契約,すなわち,本件業務委託契約に付帯する契約としてされ たものである。
そして,上記合意中には,本件業務委託契約における上 記自動更新規定(甲2の第4条)の適用を排除する旨の記載はない。
また,被告は,前記1認定のとおり,平成16年4月1日以降も,本 件業務委託契約が継続していることを前提とした言動を取り続け,原告 においても,同日以降も,本件業務委託契約に基づく受託業務を遂行し ている。
これらの事実に照らせば,原告と被告との間において,本件業務委託 契約が平成16年3月31日をもって終了する旨合意されていたとは認 め難い。
49 (ウ)被告は,乙第23号証の電子メールの記載を根拠に,Aが平成16年 9月3日当時,原告と被告との間には正式な業務委託契約が存在しない との態度を示していた旨主張する。
Aが被告の従業員に対して送信した平成16年9月3日付けの電子メ ール(乙23)中には,「ご返答の根拠は,9月1日からとされる新た な御社と当社間の業務委託契約に基づいてます。
なお,契約は正式調印 されておりませんので,あくまで移行期の暫定的なものであるとご理解 ください。
」,「以上により,今回のご依頼はあくまで「内示」として のみ受け取らざるを得ず,実際の作業は実施いたしませんのでご理解く ださい。
」との記載がある。
上記電子メール全体の記載に照らせば,上記記載は,原告と被告との 間における新たな業務委託契約の締結に向けての交渉が存在することを 前提としたものにすぎないというべきであり(前記1の認定事実によれ ば,平成16年9月3日当時は,まだ,原告と被告との間における新た な業務委託契約の締結に向けての交渉が決裂するに至っていなかった時 期であると認められる。
),原告と被告との間に業務委託契約が存在し ないことを前提としたものであるとはいえない。
(エ)被告は,原告の再生手続(当庁平成19年(再)第191号)の関係 書類の記載に関して縷々主張するものの,いずれも上記イの認定を左右 するに足りるものではない。
なお,原告は,上記再生手続における再生計画案において,再生債務 者たる原告の被告に対する訴訟において,債権を回収した場合には,再 生債権について追加弁済を行う旨定めており,この点においても,被告 の主張は失当である。
(2)争点1−2(本件業務委託契約は無効とされるべきものか)について ア被告は,本件許諾契約及び本件業務委託契約は,別紙特許出願目録記載 50 2ないし4の特許出願に係る発明をその目的として含むことから,その目 的の少なくとも一つに拒絶事由又は無効事由が内包されており,本件許諾 契約及び本件業務委託契約は,錯誤又は原始的不能により無効である旨主 張する。
イ本件許諾契約においては,契約期間中に許諾の対象となる発明に係る特 許出願のすべてが最終拒絶され,あるいは,特許が無効や取消等により失 効する場合は契約も終了するものとする旨(甲1の第8条8−2)や,原 告は被告に対し許諾の対象となる発明に係る特許出願について特許が成立 すること及びその有効性について一切保証せず,これについて義務や責任 を一切負わないものとする旨(甲1の第11条11−1)が定められてい ることに照らすと,仮に,別紙特許出願目録記載の各特許出願について拒 絶事由が存在し,あるいは,特許として成立した場合でも無効事由が存在 するとしても,本件許諾契約及びそれに付帯する本件業務委託契約におい て,これらの事実が要素の錯誤に当たるとも,契約を原始的に不能ならし める事由であるともいえない。
また,上記の点をひとまず置くとしても,そもそも,別紙特許出願目録 記載の各特許出願について,特許法の定める拒絶事由が存在し,又は特許 として成立したとしても無効事由が存在するとの点については,これを認 めるに足りる証拠はない。
すなわち,被告は,原告が別件訴訟において,兼坂契約2の目的たる別 紙特許出願目録記載2ないし4の発明に係る特許出願のうちの少なくとも 一つには,拒絶事由又は無効事由があるから,そのような発明を目的とす る兼坂契約2は,錯誤又は原始的不能により無効である旨の主張をしてい るから,本件においても,被告に同様の抗弁が発生する旨主張するものの, 原告が別件訴訟において上記のような主張をしていることのみで,別紙特 許出願目録記載の各特許出願について拒絶事由が存在し,又は特許として 51 成立したとしても無効事由が存在するとの事実を認めるに足りず,他に上 記事実を認めるに足りる証拠はない。
ウ以上によれば,被告の上記主張は理由がない。
(3)争点1−3(平成16年6月分の業務委託料についての同時履行の抗弁権 の成否)について 被告は,本件業務委託契約において,原告の負担する研究開発の成果物の 開示及び引渡義務と,被告の負担する業務委託料支払義務とは同時履行の関 係に立つとして,原告が研究開発の成果物の開示及び引渡義務を履行するま で,本件業務委託契約に基づく平成16年6月1日から同月30日までの分 の業務委託料を支払わない旨主張する。
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